80億人に問う

先日、棚を整理していたら、前職で新人だった頃の研修ノートが出てきた。

僕が以前勤めていた会社では専用の研修ノートがあり、その日に教わった業務内容や反省点、質問事項を半年間記録することとなっていた(4月〜5月の間は毎日、6月以降は週1回)。

毎日記入するのは大変だったが、毎日記入するということは、それを毎日チェックする人もいるということだ。なかなか仕事を覚えられない僕だったが、優しく指導してくださった先輩方には今でも本当に感謝している。研修ノートにかけないような愚痴を聞いてもらったことも多々あった。きっと先輩方がいなかったらもっと早く仕事を辞めていただろう。どんな言葉で感謝の言葉を伝えればいいのか分からない。分からないから感謝の言葉は言わない(言えよ)。

このノートへの記入で最も大変だったのは、必ず質問を書かなければいけないことだった。入社したての頃、本部で研修を受けていたが、質問の大切さをやたら説かれていた。「質問は必ずしましょう。でも、考えたら分かるような質問はしないようにしましょう。質問の''質''を上げるようにしましょう」と熱心に言われていた気がする。

どうして質問を必ずしなきゃいけないんだろう、考えたら分かるような質問は何故しちゃいけないんだろう、質のいい質問ってどんな質問なんだろう、と今でも思っている。

質問がないってことは成長してるってことじゃないのか。考えたら分かるかもしれないけど、それでも付きまとう不安を消し去りたいから質問をするんじゃないのか。質のいい質問って何だ(質が2回出てくるし)。質問って、点数を付けられるものなのか。

自分で考えても分からなく、かつ質のいい質問をしなければいけないというプレッシャーが、かえって質問をし辛くなっていたのではないかと、今でも思っている。なんと言うか、無駄を徹底的に削がれている感覚だった。本当は無駄から個性が生まれるはずなのに。

僕が日々感じている疑問、迷い、不安は果たして何点なのか。100点じゃなければいけないのか。誰も答えてくれないので、とりあえず、研修ノートは処分することにした。