井の中のアイランド

エクスとプレス

大陸より来たる

10月下旬頃から、上空よりコーコーという甲高い声が聞こえてくるようになった。ハクチョウが越冬しに日本へ渡ってきたのだ。

上品っすね。

ハクチョウはユーラシア大陸の奥地、シベリアで繁殖し、向こうの寒さが厳しくなる10月〜3月にかけて温暖な日本で過ごす。日本でもお馴染みの鳥だが、野生で見られるのは実は半年間だけなのだ。

ハクチョウのような大型の渡り鳥は、V字の編隊を組んで飛行する。

壮観っすね。

V字になって飛行する理由を調べてみたら、飛ぶときに楽だかららしい。大型の鳥が飛ぶと、翼の前後に渦状の乱気流が発生し、その乱気流の斜め後方に必ず上向き気流が出来るそうだ。後続のハクチョウは、その上向きの気流を上手く使いエネルギー消耗の少ない飛行をするのだと言う。

「それじゃあ先頭のハクチョウが大変っしょ。」

スズメの言う通り、先頭のハクチョウが大変なので、時々先頭を交代しているらしい。大陸から日本まではおよそ3,000km。絶妙なチームワークで日本へと飛来しているのだ。

僕はハクチョウが空を飛んでいるところを見ると、季節の移り変わりをひしひしと感じるから好きだ。近頃は季節の変わり目がぼんやりしてきたが、ハクチョウは間違いなく冬の始まりに日本へやって来て、冬の終わりに日本を去っていく。青空によく映える白い体に、新しい季節が始まる高揚を感じずにはいられない。

そろそろ、冬がやって来る。