まるで毒蜂のように

お酒が苦手だ。アルコールを受け付けない訳ではないが、味が苦手だ。味覚が子どものまま成長していないらしい。

コロナ禍ではほとんど行ってないけれど、たまの飲み会でも専らソフトドリンクやノンアルだ。僕の友達にお酒を強要してくるような奴はいない。そんな奴らだから、アルコールを体に取り込まなくても、僕は十分楽しい。

 

二十歳を迎えてから初めてビールを飲んだとき、「大人はこんなんで楽しんでんのかよ」と思った。お酒を飲めることは大人の特権だが、自分だけ特権を奪われたみたいで少し寂しかった。アルコール度数の低いチューハイやカクテルなんかも試し、「甘くてほとんどジュースと変わらないぞ!これなら飲めるかも!」と思ったのだが、じゃあジュースでいいじゃないかとなり、自分でお酒を買ったことはほぼない。

 

そんな僕だが、一度だけ父親からお酒をプレゼントされたことがある。成人式で秋田に帰省中、お祝いにプレゼントするからと、何か飲みたいお酒はないか聞かれ、僕は「甘いやつがいいかな」と答えた。それを踏まえて父親が買ってきてくれたお酒がこれだ。

ジャックダニエルテネシーハニー

 

ぼくが言った甘いやつとは、前述したようなチューハイやカクテルを指していたのだが、父親はあくまでも本格的なお酒の中でも飲みやすい種類と捉えこれを買ってきてくれた。お酒好きとお酒嫌いとでは解釈がまるで違う。

仙台に戻った後、早速一人で飲んでみた。当然だが僕にはウイスキーの知識などなく、父親が言っていた飲みやすいという言葉を真に受け、炭酸と1:1で割って飲んだ。

…不味い。チューハイとかと全然違う。正直全然好きじゃない。グラス1杯飲み干すのもきついかも…。だけど、せっかく買ってもらったお酒だ。父親の思いを無下にするわけにもいかない。頑張ってこのグラスは片付けよう。

そうして無理して飲んだ結果、僕は見事に酔っ払い、頭に思い浮かんだ単語を部屋でひたすら叫ぶ人になってしまった(バッキンガム宮殿とやたら連呼してたのは覚えている)。翌日は二日酔いとなり、辛い1日を過ごした。

それ以来、本格的にお酒を飲んだことはないから、僕が酔っ払っている姿を見た人はいない。

 

ジャックダニエルテネシーハニーのボトルには蜜蜂が描かれているが、僕にはスズメバチくらい獰猛に見える。