井の中のアイランド

エクスとプレス

貴職におかれましては

仕事上、外部へ文書を送付することがあるのだが、そんなときには必ず時候の挨拶を添える。

「○○の候」みたいなやつだ。○○にはその時々の季節感を表した言葉が入る。

2月であれば、「向春の候」なんかが使える。向春とは春の訪れを意味する。同じ2月であっても、上旬・中旬・下旬で適した言葉は異なり、例えば「立春の候」は2月4日頃から2月18日頃まで使える。二十四節気で表すと立春はその期間が該当するらしい。

この業務をするようになってから、いろんな言葉を知るようになった。それと同時に日本語の美しさを実感している。2月の時候の挨拶には他に梅鶯(ばいおう)なんかがある。梅がほころび鶯の鳴く頃という意味を持つらしい。言葉から心地よい暖かさが伝わってくるようである。

僕がいちばん気に入っているのは、5月の時候の挨拶として使える薫風(くんぷう)だ。風が薫る。なんと鮮やかな響きだろうか。5月の爽やかさを表した素晴らしい言葉だ。ちなみに僕は5月産まれなので、そのおかげか非常に爽やかである。

次に文書を出すときにも、時候の挨拶を調べて記載したいと思うが、要はその時期に適した言葉を使用すればよいので、何かオリジナルを考えたいところだ。今の時期なら「缶ビールやペットボトル緑茶のラベルが春限定使用になる候」なんていいかもしれない。僕の周りの大人はちゃんとした人ばかりなので、それが世に放たれることはないだろうが。