僕とムカデさんの700日戦争

僕の実家は田舎にあるので、家の中によく虫が入ってくる。これはもうしょうがない。どれほど戸締まりを徹底していても、ちょっとした隙間から奴らは入ってくる。ある程度、覚悟を決めて生活するしかないのだ。

家に侵入してくる虫の中で最も脅威なのは、ムカデさんだ。

ムカデさん。いらすとやって本当にいろんなイラストがある。

詳しい説明は省くが、体が細長くて、妙に肉厚で、足がたくさんあるという、虫が苦手な人が見たら前のめりにぶっ倒れるくらい恐ろしい見た目をしている。あと毒も持っているので咬まれるとめちゃくちゃ痛い。決して強い毒ではないけれど、極稀にアナフィラキシーショックを起こすこともあるらしいので注意が必要だ。そのスペックから思わず敬称をつけて呼んでしまう。

僕はムカデさんを見つけたら必殺のハエたたきスマッシュ(攻撃力800)で退治するのだが、ムカデさんはなかなか硬く、一撃で仕留めるのは至難の業だ。ムカデさん用の殺虫剤も有効だが、効いてるのか効いてないのか分からないうちに物陰に隠れてしまうこともあるので、冷凍スプレーがオススメだ。冷凍スプレーなら瞬間的に動きを封じられる。これは『男子高校生の日常』を読んで得た知識だ。

それにしても、ここ2、3年で家に出るムカデさんの数が妙に増えた気がする。生活環境は昔から変わっていないし、家の外壁が破損している訳でもないのに、どうしてだろうと思っていたのだが、簡単なことだった。

シズク&シジミ

この子たちが見つけてくるのだ。猫の聴力は人間の8倍で、犬よりも優れているという。ムカデさんが動く音は人間にはほぼ聞こえないが、猫ならちょっとした音でも気づくから、すぐに見つけてしまう。当然、猫はムカデさんを見ても恐れたりせず、むしろ積極的にちょっかいを出しに行くので、ムカデさんが人目に付く場所まで引っ張り出される機会も増えるという訳だ。猫に散々おもちゃにされたムカデさんは、僕が見つけた頃にはほぼ瀕死状態になっている。

僕とムカデさんの700日戦争は、猫を飼うことで幕を閉じたのだった。