ごめんなさい

僕の家は田舎にあるので、あたり一面に田んぼが広がっている。

もうすぐ田植えの季節だ。土が耕され、田んぼに水が入るこの季節がいちばん好きだ。水が入った田んぼは五月晴れを映し出し、地上を巨大な鏡に変えてしまう。稲が植えられる前のこの時期だけしか見られない光景だ。「由利本荘市のウユニ塩湖」と呼んでやろうと思ったが、落ち着いて考えたら全然ウユニ塩湖ではないのでそう呼ぶのは止めた。こういうときに落ち着ける自分で良かったと思っている。

僕の家でも田んぼを持っているが、僕が物事ついたときには既に稲作をやっていなかった。最近では父の友人に頼んで蕎麦の実を植えている。僕の家に限らず、稲ではなく蕎麦の実を植える田んぼが本当に増えた。農家の方曰く、蕎麦の栽培は比較的簡単らしい。蕎麦は白い花を咲かせるので、なかなか壮観である。

母方の祖父母宅でも田んぼを持っており、僕が小学生の頃までは実際に稲作をしていたので、僕もたまにお手伝いをしていた。お手伝いと言っても、田んぼに植える前の稲に水遣りをするといったすごく簡単な作業だけだが。だけど、本当に芽が出たばかりの稲を見ていたので、秋になり稲が立派に育ったときはやっぱり嬉しかった。ほんの少しでも農業に触れると、「いただきます」という言葉の深みを知る。

今日の夜も、近くの田んぼからカエルの大合唱が聞こえてくる。これぞ田舎って感じで安心するが、正直ちょっとうるさいレベルだ。そのせいで最近なかなか寝付けないので、カエルは僕に謝ってほしい。僕も由利本荘市のウユニ塩湖とか言ったのを謝るので。