井の中のアイランド

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月末は会計業務で忙しい。

今年度から一部会計業務を任されている僕だが、今日は初めて月末の銀行処理に行くことになった。まあ僕は通帳や伝票を持っていくだけで、処理をするのは銀行員さんだが。

2つの銀行に行ったが、月末の銀行はいつにも増して混んでいる。これは完全に誇張しているが、由利本荘市の全ての人間が銀行に来ているのかと思ったほどだ。

会計業務は午後も続く。取引先を何件か巡って月末の支払いを行う。もちろん銀行振込みでもよかったのだが、件数が多くなると振込み手数料も馬鹿にならないので、直接支払いに行けるところはそうしている。幸い天気も良く、ドライブをしているような感覚だった。

取引先を回っていて考えたことがある。以前の仕事を今も続けていたら、もしかしたら同じような業務をしていたかもなと。だけど、その想像はすぐに秋の空へ溶けていった。そもそも以前の仕事を今も続けられる訳がないのだ。

以前の仕事は、僕の能力では到底無理な仕事だったと思う。常に背伸びをしていたというか、飲めもしないブラックコーヒーを無理して飲んでいたような感覚だ。他の同期はブラックコーヒーを美味しく嗜んでいるように見えたし、砂糖を入れて飲みやすくしているようにも見えた。要するに、僕はそもそもの能力が低かったし、それを埋める努力もできなかったのだ。

先日、前職の同期何人かと久しぶりに会う機会があった。その時に会った同期のほとんどは既に違う仕事をしているが、僕よりも上手に(もちろん努力をして)仕事をしていた人たちだ。今も昔も彼ら全員を尊敬してしまう。

同期と同じ店舗で勤務することはなかったが、活躍ぶりはどうしたって聞こえてくる訳で、当時の職場の上司からは当然比べられた。言い訳になるが、その頃の僕はいっぱいいっぱいだったので、追いつけ追い越せなんて気持ちは湧かず、みんなすごいなあと思うだけだった。

結局、そうした状況に耐えられず、ほどなくして仕事を辞めた。上司とは最後まで上辺の付き合いしかできなかった。

今の職場に同期らしい同期はいない。中途入社だから当たり前だが。誰かと比べられることはないが、誰とも比べられないからこそ頑張らなければいけない。ブラックコーヒーを甘くする方法を見つけながら。

取引先巡りも終盤に差し掛かった頃、上司からラインが入っているのに気づいた。「順調か?今日暑いからちょっとくらいコンビニでサボってきてもいいぞ!」と書いていた。改めて、ここならうまくやれる気がする。

お言葉に甘えて、コンビニに寄って少しだけサボった。カフェオレを買って飲んだ。甘い甘いカフェオレだった。