井の中のアイランド

エクスとプレス

吉野家でねぎ塩から揚げ丼を頼む

吉野家と言えば牛丼。牛丼と言えば吉野家だ。そんな吉野家で僕は今日、ねぎ塩から揚げ丼を注文する。ちょっとした冒険だ。

店内に入る。僕と同じタイミングで入店したおじさんは、席に座ると同時に牛丼大盛りを注文した。当たり前だ。吉野家=牛丼という方程式は、すべての日本人のDNAに刻まれている。一方で、メニュー表をしっかりと凝視して、僕は店員さんに伝える。

「ねぎ塩から揚げ丼のサラダセットで」

一瞬、おじさんの背中がピクリと動いた気がした。無理もない。吉野家=牛丼が答えとして正しいならば、僕の注文はある意味では間違いなのだ。だけど、僕は別にイレギュラーな存在になりたかった訳でも、若さ故のimpulsivityを誇示したかった訳でもない。ただ、自分の中に眠る「吉野家のねぎ塩から揚げ丼ってどんな味なんだろう」という問いに答えてあげたかっただけだ。

牛丼があっという間に提供されるのに対し、ねぎ塩から揚げ丼は提供に7〜8分かかった。注文を受けてから揚げているということか。

これが吉野家のねぎ塩から揚げ丼…!

ねぎ塩ダレが思ったより立体的で少し怖気づいてしまった。肝心の味だが、から揚げはサクサクでジューシーだった。ねぎ塩ダレは、どちらかと言うとコショウの味が強くて、なんだかピリつくなあというのが最初の感想だった。しかし、付属のマヨネーズをそれとなくかけてみると、一気にまろやかさが増し、より箸が進んだ。なるほど、ねぎ塩から揚げ丼はマヨネーズをかけることで完成となるのか。30歳を手前にしてまた1つ賢くなってしまったよ。ねぎ塩から揚げ丼はなかなか美味しかった。

僕が食べ終わる頃に、新たなお客さんが入店してきた。その人が注文したのはから揚げ定食だった。いや、から揚げってけっこう出るんかい。

お会計を済ませ外に出る。長年気になっていた吉野家のねぎ塩から揚げ丼。その味を知って僕は思うのだった。吉野家はやっぱり牛丼だな、と。