井の中のアイランド

エクスとプレス

『世界』版もありますよ

好きな物を極めるというのは凄いことだ。例え好きな物であっても、極めるにはそれ相応の熱を持っていなければならない。例えば24時間そのことを考え続けるとか、好きな物を生活の中心に据えるとか、そのレベルの熱だ。僕にも野球やウルトラマンなど好きな物はたくさんあるが、四六時中そのことを考え続けるほどの熱は持てない。だから僕はその道を極めることは絶対にできない。

そうした圧倒的な「熱」を感じた一冊がある。

『日本現代怪異辞典』(朝里樹 著)

著者の朝里樹氏は幼少期から怪異・妖怪といった類が好きだったらしく、それが高じてこの本を出版するに至ったらしい。言葉にすると簡単だが、一冊の本を作ってしまうなんて相当凄いことだ。ちなみにこの本は450ページを超えるボリュームで戦後に語られ始めた怪異が五十音順に収録されており、詳細な解説や怪異の発生場所など内容も充実している。おまけに朝里氏は作家でも民族学者でもなく、普段は公務員として働いているらしい。

収録されている怪異をピックアップして紹介すると、口裂け女やテケテケなど誰もが知っている現代妖怪から、八尺様やクネクネなど近年になってWEBサイトで広まった怪異まで収録されている。豊富な文献を参考にされているので、解説の深掘りが凄い。空想の産物でしかなかった怪異が一気に身近な存在として感じられてしまう程だ。

『日本現代怪異辞典』。読み物として極まっているので、皆さんも機会があれば是非ご一読いただきたい。そして熱に圧倒されてほしい。