前日の夜は宿直だった。クーラーをガンガンに効かせて快適に過ごせるので、家で過ごすよりもかえってよかったかもしれない。夜に施錠のため風除室に出ると、サウナのような暑さだった。僕はサウナが苦手なのでさっさと退散した。
朝、今度は開錠のため外へ出ると、空気がちょうどよくひんやりしていた。このまま一人でラジオ体操でもしてやろうかと思ったが、そもそもラジオがなかったし、上下黒い格好の奴が朝から動いていたら現代妖怪と間違われそうなので止めておいた。クネクネの正体って田んぼのド真ん中でラジオ体操をしていた奴なのかもしれない。
昼休憩時、暇つぶしにふらっと本屋に行った。夏休みだからか、店内にはいつもより小学生くらいの子が多い。とある棚を曲がろうとすると、走ってきた子どもとぶつかりそうになった。その子の親が「走ってたら迷惑かかるでしょ！謝んなさい！」とけっこうな剣幕で言っていた。いやいや謝らなくていいですよと思った。たしかに僕は本屋の中をゆっくり歩いていたが、だからと言って誰にも迷惑をかけていない保証などないのだ。でもまあ、親の言うことはちゃんと聞いておいたほうがいいかもしれないね。
宿直明けは大抵の場合、有休申請して早退する僕だが、今日は定時まで仕事をしていた。クーラーの効いた職場のほうが快適だと思ったからだ。定時を過ぎてもクーラーの効いた部屋で過ごしていたかったが、無駄に残っていても職場に迷惑がかかると思ったので、おとなしく帰った。走らずにゆっくり帰った。
