井の中のアイランド

エクスとプレス

J

盆の入り。ご先祖様の魂があの世からこの世へ帰ってくる日とされている。お迎えの意味も込めて、この日にお墓参りをするのが一般的だ。僕の家から歩いて行ける距離にお寺があるので、もちろん行ってきた。

墓地から見た青い空。帰宅中のご先祖様の姿が見えるかと思ったが、見えなかった。見えても困るけど。僕が行った時間帯はそれほど人がおらず、既に参拝を終えて御供え物が並ぶ墓が多かった。辺りに漂う線香の匂い。浮かんでくるのは中村梅雀の顔。日本人らしさを感じる1日である。

お墓参りを終えてからは、高校時代の友人と会って昼ごはんを食べてきた。野球部の友人で、全体練習が終わってから毎日一緒にトスバッティングをした仲である。人生で何回トスバッティングをしたか分からないが、いちばん多くのトスを受けたのは間違いなく彼である。現在は北海道で働いており、お盆に合わせて帰省していた。

昼ごはんには焼き肉を食べた。久しぶりに会う人とご飯を食べに行くのに、焼き肉ってベストだと思っている。肉が焼けるまでの間にいろいろと話ができるから。

どうやら成人式のときに会ったのが最後だったらしく、実に10年ぶりの再開だった。そんな気がしていなかったので意外である。この10年間の近況をたっぷり報告し合った。向こうは怪我もなく病気もなく、それなりに元気に過ごしていたらしい。それなりに元気だったならじゅうぶんである。

腹いっぱい食べたら、友人を家に送り届け、僕も帰宅した。ご先祖様もそろそろ家に着いたかな、なんて考えながら。ご先祖様には何をご馳走すればいいんだろう。豪勢な食事よりも、焼き肉みたいなのが喜ばれるかもしれない。