井の中のアイランド

エクスとプレス

路傍のフジイ

漫画『路傍のフジイ』を読んだ。

路傍のフジイ(鍋 倉夫 著)

X(旧Twitter)(←これまだやらなきゃダメか?)で面白いという声を目にした。普段、話題のものに何でもかんでも手を伸ばすタイプではないのだが、どうにも気になって購入してしまった。

この漫画は、悩みを抱えている人々が、主人公の中年男性フジイ(表紙でこっちを見ている人)の言動・生き方に少しずつ影響を受けていくストーリーだ。胸が熱くなるバトル物や恋愛物ではないが、僕はこの漫画を読んで頭をパシンと叩かれた感覚に陥った。

他人の目だったり、将来への不安だったり、過去の苦い思い出だったり、誰だってそういう類のものを胸に秘めていると思うが、フジイはそういうものとも、承認欲求やマウントとも無縁だ。のらりくらり飄々と生きているように見えるし、世間にどっしりと構えて生きているようにも見える。それでいて、周りの人間を突き放すようなことはしないし、かと言って必要以上に内面に入ってくることもない。フジイは常に自分の気持ちを伝えているだけだ。なのに、それが穏やかに心に染み込んでくる。

フジイの台詞で「僕は…無理してまで人に好かれようとは思いません」というものがある。実は僕も同じ考えを持っているのだが、これまであまり積極的に口にはしてこなかった。無理しても人に好かれようとするほうが正しいのだと、それが世間の常識だと思っていたからだ。

でも、フジイの台詞を聞いて「それも一つの正解ということにしてもいいかもな」と思った。無理してまで人に好かれようとしているうちは、たぶん、本当に人から好かれることはない。現に僕と仲良くしてくれる人たちは、僕の変な部分も、卑屈な部分も、未練がましい部分も、全部知っている人たちだ。

そういう部分を出していける人とは、これからもお世話になりたいし、僕からも積極的に感謝を伝えたいと思っている。

『路傍のフジイ』、今ならWebでも一部無料で読めるので、気になる人は是非読んでみてほしい。刺さる人は多いと思います。